近年IT業界を騒がせている「半導体不足」。この問題により、現在多くの機械製品の生産量が減少しています。もちろん日本だけでなく世界的に見ても深刻な問題ということを認知している方は多いですが、いったいなぜ現在半導体が不足しているのかという理由をしっかりと知っている方は意外にも少ないのです。本記事では、半導体不足の原因や今後の展望、また、そもそも半導体とは何なのかを詳しく説明していきたいと思います。
半導体ってどんなもの?
電気を通す物体は「導体」と言い、反対に電気を通さない物体は「絶縁体」と言います。半導体とは、導体と絶縁体の中間の性質をした物体のことです。半導体は、熱や光などの外的要因により導電性が大きく変化するため、このような導体と絶縁体の中間性質を持つことができるのです。この性質により電気信号の制御が可能となるため、PCやスマートフォンなどの多くの電子機器に使用されています。
半導体の正体は?
半導体性質を持つ物質はいくつかありますが、現在最も半導体として利用されているのはケイ素(Si – シリコン)という元素です。ケイ素は主に岩石などに含まれる元素ですが、実は樹木をはじめとした植物などにも含まれているため、地球上で酸素の次に多く存在しています。また、ケイ素は半導体物質の中でも安定した構造をしているため、電気信号の制御が簡単という点も半導体としてよく利用されている理由の一つです。
もちろん、自然界にあるケイ素をそのまま利用するわけではなく、精錬をして純度の高いケイ素にします。その際、大量の電力が必要となるため、日本の場合は、電力の安い中国などで精錬されたケイ素を輸入しています。
地球上に大量に存在する元素であるため、原料不足の心配はしばらくはないかと思います。ではなぜ、半導体不足に陥ってしまったのでしょうか?
半導体不足の原因は「需要と供給の差」によるもの
半導体不足の一番の原因は「需要と供給の差」です。産業や生活の機械化が進んでいる昨今では、半導体の需要が急増しています。その需要に応えられるほどの半導体を生産できればいいのですが、とある大きな出来事によりそれが困難になりました。それは新型コロナウイルスの蔓延です。
新型コロナウイルスの蔓延により、輸出入が困難になったり、ロックダウンなどの政策が施行されたりした影響で、多くの企業は事業の縮小をする事態となりました。それは半導体産業も例外ではありません。半導体の需要が高まる一方で、原料の輸入難などで生産が追い付かず、その影響で半導体が不足しているのです。現在は新型コロナウイルスによる産業への影響が回復しつつありますが、他の要因で世界情勢が悪化しているため、今もなお半導体不足は解消されていないのです。
半導体不足は今後どうなる?
新型コロナウイルスなどによる半導体産業への影響は少しづつではありますが回復傾向にはあります。ただし、半導体不足が解消されるのはもうしばらく先の話でしょう。そのため、半導体を使った製品は生産量を調整し、製品販売の一時停止などが起きないよう対策していく必要があります。また、半導体メーカーの生産能力の向上ということも今後の課題と言えるでしょう。
私たちができる半導体不足の対策
残念ながら、個人レベルで半導体不足を直接的に解消するということは難しいでしょう。しかし、次のような方法で半導体不足による電化製品在庫の不足を緩和することはできます。
1.代替品や中古品を検討する
PCやスマートフォン、自動車などには多数の半導体が利用されています。「少し調子が悪くなった」「新しいモデルが発売された」などという理由ですぐに新製品を購入してしまうと、製品在庫が不足してまた新たに製造する必要があるため、結果的に半導体不足の原因となってしまいます。もちろん、新製品を購入することで経済的な好循環をもたらすことに期待はできるのですが、半導体不足が長期化しないようにするためには、代替品や中古品を検討するということも大切かと思います。
2.電子機器はリサイクルする
個人レベルでできる1番の半導体不足対策は「電子機器のリサイクル」でしょう。電子機器をリサイクルすることで、半導体を再利用することが可能です。そのため、適切に電子機器のリサイクルを行えば、半導体の生産が不足しても新たな電子機器を生産することができます。また、電子機器には半導体以外にも、レアメタル・レアアースなどの希少価値の高い金属も利用されているため、半導体以外の資源不足も緩和することができます。
電子機器をリサイクルするためには、市町村などの指示に従い適切な方法で処理をする必要があります。分別などが面倒だからという理由で電子機器を不法投棄したりすることは控えましょう。
まとめ
今回は半導体不足のお話をさせていただきました。残念ながら半導体不足の解消には時間がかかると考えられています。しかし、一人ひとりがこの問題と向き合っていくことで、半導体不足による影響を抑えることは十分に可能だと思います。半導体以外にも「資源」というものには限りがあるため、リサイクルなどの対策を講じて資源不足という大きな問題を少しづつ解消していくことが大切です。